よいどれ

 冷蔵庫を開けた途端郁が泣き出した。何事かと慌ててベッドを飛び降り、備えつけの小さな冷蔵庫にしがみついて泣く丸っこい後頭部へと堂上は手を伸ばす。

「何した郁」

 問いかけるのとほぼ同時に振り向いたショートヘアがキッと堂上を睨みつけた。怯む間も無く酔いどれのアルトがわめく。

「きょうかんのっ、ばかあああああ」

「は?何でだ俺なんかしたか」

「プリン!たべたぁ!あたしの!」

 プリン?堂上は眉を顰める。

「お前の分入ってるだろ、ほら、そこ」

「違うッ!これプレーン!あたしのカボチャだった!期間限定!」

 威嚇の声量が増し始めた恋人に堂上はクワバラクワバラと内心手を合わせる。チェックインする前に人気のケーキ屋で調達してきた二人分のカスタードプリンは確かに先ほど、郁の入浴中に先に頂戴したが、それぞれ種類が別のものであったことさえ堂上は気付いていなかった。

「あー悪かったよ、また買ってやるから」

「無理ですよおおおちょう人気なんだからあああああ今日は運がよかっただけなのそれなのにいいいいいい!」

「普通のじゃダメなのか」

「ちがうううううかぼちゃああああああうわああああああ」

 ああクソめんどくせぇ可愛い。堂上は郁のとなりに屈み込む。度数三パーセントの缶チューハイおよそ半分で出来上がる酔っ払い。なんとも経済的である。

「郁」

 まだ呼ばれ慣れない呼称にひくっと跳ねた肩に堂上は苦笑する。ああ畜舎ほんと可愛い。ずるい。可愛い。お前が悪い。大の男をこんなに酔わせて。次の一瞬には何を思うより先にその細い肩を引いて口付けていた。押し付けるような強引さが我ながら浅ましい。それでも止めたくなくてさらに踏み込む。乾いた唇で郁のなめらかな肉を肌を産毛をなぞる。やがてゆっくりと離れてもなお、逃げられぬよう顎を指先で持ちあげた。まだほんのりと温い湯上がりの肌。その先でほのかに開かれた唇。紅く火照っているのは今、まさに今、吸われたばかりだから。甘くてやわらかくて可愛くて愛しくて堪える間も無く二つめをしっとりと刻む。郁。合間にささやいた声に、ひうっ、と無声音の吐息が混ざる。

「俺が悪かった。何でも一つ言うこと聞く」

 今更入れた詫びはしかしやや放心状態の恋人の耳にも納得の形で届いたらしい。今度から困ったときにはこの言葉使おう。ひっそり心に誓う。

「もっかい」

 何でも一つ。ほとんど考えている間は無かった。我に返った堂上の目前、赤い頰の恋人は、ぽつり呟く。

「キス、もういっかい」

 ああもう。束の間天を仰いだ堂上はやがて正面の凶悪な天使に対峙する。

「一回でいいのか」

「うそ。いっぱい」

 心得た。肯定の代わりに堂上は改めて口付けを贈る。ぱたんと閉ざされた冷蔵庫から離れて、二人は唇から解け合う。揺れるように漂うように、ひとつきりの夜は流れる。



fin.




 *




こんにちは。またしてもご無沙汰しておりました、みおです。

上記のお話は去る11月19日・いいいくの日にアイフォンで三十分くらいでさささっと書いた小話でした。某所で公開したのですが何かと雑な文章だったためすぐに消そうと思っていたらコメントまで頂いてしまって、なんだか普通に愛着が湧いてしまったのでとりあえずこちらにも載せておこうでも短すぎるしブログなら許容範囲かなぁとかもにゃもにゃ。しばらく書けないだろうと思っていたとしょせんですが、こんな小さなお話でも書いてりゃ楽しいものですよね。最近、泣いている相手をキスで泣き止ませる的なシチュエーションが俺の中で話題になっていたのでそんな感じで書きました。これぞまさに俺得。どやぁ


先月の更新の後に、数名のお方から「サイトやめるのか」と尋ねられまして、ううんどうしたらいいのかなぁとぼんやり考えて、とりあえず残せる間は形を変えてでも残しておこうかなと思うようになりました。お声掛けくださった皆様、どうも有り難うございます。

まだ色々と未定ですが、他作品の二次創作とか、お目汚しにならない程度に一次創作とか、置ける部屋を増設できたら、残す価値も(自分の中で)多少は上がるかなって、勝手に考えております。まあ他作品二次書く予定まだ全然無いんですけどね。いや書きたいのはたくさんあるんだ…るろけんとかRDGとか…RDGなんて正に今がうってつけの季節になりつつあるので普通に書きたいですよねみゆみこみゆみこみゆみこ※思うだけならタダ

もう少し時間を大切につかえる人間になりたいなぁ。来年あたりから頑張ろうかないやしかし。

適当な管理人で申し訳ないばかりではありますが、細々と続けていけたらいいなぁと思っております。よろしくお願いしますうへへへへ。